慶應日記@はてな・乙

慶應義塾大学・通信教育課程・法学部・乙類・70期・学士入学の学習記録・復習ノートなどなど。こちらでは乙類の科目(政治学)を扱う予定です。

ホッブス、ロック、ルソー

 

  第一のテーゼ:政治思想は総じて、被支配者をも含む共同体全体の利益や善を正しい統治の目的としている。
第二のテーゼ:大半の政治思想は共同体を危機から救い、永続的な安定と秩序を保障するために構想される。
第三のテーゼ:往々にしてそれが現実の中で思想家の意図に反して歪められ、共同体を新たな危機に陥れると、その危機に応答する形でまた新たな思想が生み出される。
(堤林2016、149頁)
 
 
 
               
  ・近代国家(堤林2016、210頁)
  国家のフィクション性:人間が言葉により作りだした作為の産物
  国家の二重の非人格性:具体的な個人、団体と同一視されない。支配者・被支配者から独立している。→主権の抽象性、権力機構の自律性
  主権の抽象性、権力機構の自律性:権力者と権力の座・職位を区別
  上記を前提とした代表観念
  ・絶対主義思想の台頭(堤林2016、211頁)、人民が政治権力の源泉
               
  黙示的同意から明示的同意の重視への転換:価値観の多元的な分裂競争、伝統的共有概念の希薄化
  →法やルール、社会契約、すべて人間は自由で平等という前国家的状態から国家理論の構築(堤林2016、213頁)
               
  ホッブス <ロック> <ルソー>
第一のテーゼ 国全体の利益、人民の利益の実現が政治の目的        
第二のテーゼ              
第三のテーゼ              
               
what is 人間の認識能力を超えている 重視する  
what seems 物体とその運動により説明可能。人間の理性のより、平和と安定を目指す=国家:科学的合理的に基礎づける what isに導き、what isによりwhat mattersを規定  
what matters        
               
  ※推理能力としての理性:道具・手段としての理性、言葉にもか関わる(堤林2016、219頁) ※理性と信仰の両立(堤林2016、248頁)  
  what isをwhat seemsの領域に引きずりおろす、人間中心的(堤林2016、243頁) 白紙状態→信仰・理性→神の意  
               
国家権力 国家の一体性の実現、権力・最終的な決定権が一か所に集中
立法権、執行権、宗教、学問的論争の決定権も主権者に帰属
公共善の実現と各人の固有権の保全※所有権:労働(同意の産物ではなく。フィルマーとの違い)  
               
  人民が政治権力の源泉、政治の目的は共通善・社会全体の利益の実現が広く認められている(時代背景)        
         
  →人民が権力を放棄し、単一にして絶対的な主権的権力を創出する
※国家権力:人民の権力、主権的権力を行使する支配者からも区別される
       
         
         
               
自然状態 バラバラの個人が自己保存を追求する完全に自由な状態(堤林2016、217頁)、体力・知力とも大差なし(220頁) 完全に自由な存在だが、自然法の範囲内で(放縦との区別)。また平等な状態=固有権を侵害できない。
自然法:神の定めたもの、人間の認識に先立ち、自由もそれに拘束される
→比較的平和な状態
人間:動物と変わらない、理性も発揮していない、道徳概念もない、他の人間とも遭遇しない(敵対的感情もない)、自然的な感情=憐みの情・自己愛
自然状態の帰結 →平等=相互に不信→自己保存を追求→闘争状態→孤独、貧相、不快…→完全な自由は自由を消滅させる 自然法の執行が各人に委ねられる。→不都合(バイアス)→公平な判断・裁き→政治的統治が必要 人間:自由と改善能力が備わっている=この状態には留まらない。段階的に進む
最初の革命の時代=原初的な私有財産:恋愛感情、嫉妬心→自尊心と結びつく→徐々に堕落
第二の革命の時代=治金と農業→文明化→理性・技術の発達→不平等:支配と隷属、暴力と略奪→ホッブス的な戦争状態→契約:詐欺的なもの(富者が安定的に富を確保する)→社会と法→不平等の制度化→専制支配→新しい自然状態
共通権力がないため、自然権の行使をする・その自由がある(221頁) ※神の意志にも適っている=人間に知性と言語を授けた
  →死を恐れ(中略)理性のより自然法を求める 自由な同意で自然的自由を放棄して公共の手に委ねる→統治機構→社会契約。神学的パラダイムで説明
  →契約・信約を結ぶ(第二の自然法)、それを履行する(第三の自然法
  ※理性の法則:みんな守る
  反故にする?→権力機構の存在   ※人間自体が変質:有徳な市民 ※現在主義:常に現在の人民の意思が優先、過去の約束には縛られない
→第四の法:有徳な市民 過去や未来に配慮

自由 (本来は)自由:外的障害が存在しないこと(堤林2016、233頁)。消極的な定義
→恐怖は外的障害ではない=自由な行為
自由:力能の概念(知性、意思、選択能力を持つ人間のみ)、選択の契機の重視 自由:自己支配、社会的自由:一般的意思に従うこと
               
  国家:フィクション
代表:国家の作為的な人格、臣民の意思の体現
代表理論:権威付与

代表者の意思:すべての人間の意思(とされるように国家が創出)
※代表:王でも議会でもよい
→否定ができるのは自己保存が危うくなった時のみ
→抵抗権??
最高権力:人間全体に帰属、自然権の範囲内
固有権の保全のため立法部の(信託に基づき)樹立、執行権力との分離、執行権力に対する優位
立法部の創設=統治の開始=存続している限り政治権力は人民に戻らない、固有権の侵害=人民に戻る社会は存続する。

主権と立法権の等値:一般意思の行使
立法過程:全市民の参加
主権の絶対性:臣民に対する保証は不要 主権の中に一般意思が存在、抵抗権は認めない
一般意思:多数の意思(自分の意思:特殊意思でもある…反する時は?)、公共的利益の追求(全体意思との違い)
一般意思による法:強制力を持つ
多数決から一般意思の導出:条件がある(領土・人口、貧富の差、等)
有徳な市民:一般意思を正しく認識できる、立法過程から一般意思の形成、自由の保全
立法者(共同体の外)により実現
独裁官:制度や法で対処しきれない問題が生じる=リーダーの必要、非常事態


 
 
 
 
 
 
               
<参考文献>堤林剣(2016):『政治思想史入門』、慶應義塾大学出版会